観蝶日誌
2022.7.3 更新
7月に入りました。ゼフをはじめ次々夏の蝶が発生してきましたが、今回はまたまた地味な幼虫探し。
フィールド図鑑を作るときに散々私らを苦しめた難敵種を再度探してみました。
まずはオナガアゲハの幼虫です。オナガアゲハの食草は従来本道ではわからなかったのですが、それを解明できたのが伝説の(?)生態図鑑「北海道の蝶」(道新)を作ったときでした。
兄と辻氏と私の3人で道南の蝶の生態写真を追っていた時です。(1985年、昔話ですみません)
上ノ国町の山奥でオオゴマシジミを撮影していた時に沢の崖の上の方でオナガアゲハが小さな樹にフワフワ旋回していました。
あれ、産卵かな?と思い崖をよじ登っていくと母蝶は去ってしまいましたが、その低木に卵がついていました。食草ツルシキミの発見でした。
あれから30数年後、新たな図鑑「完本」→「フィールド図鑑」作成に取り掛かったのですが、ツルシキミについている卵や幼虫はやはり難敵でした。それを打開できた場所(富良野市布部)に行ってきました。
その場所は最初に発見したところと同じ自然林が生い茂る斜面です。
こんな感じです。
林床にツルシキミが散見できますがわかるでしょうか。
枝ににしがみつき斜面を移動しながら幼虫を探します。やっとのことで1頭発見できました。
2齢幼虫です。「フィールド図鑑」59Pの写真と似ていますね。それもそのはず全く同じ場所でした。
母蝶はこんな斜面に入り込んでツルシキミを見つけ出しては産卵しているのですね。カラスアゲハたちとは違うんだと妙にこだわっていますね。
結局1時間弱探してこの1頭だけでした。やはり難敵種です。
次の難敵種はルリタテハです。これも道新の「北海道の蝶」作成時には道南のサルトリイバラで撮影しています。
サルトリイバラは道央以北には見られません。何が食草かなあと探していて、見つけたのが富良野岳山麓の原始が原登山道のオオバタケシマランでした。
これも30年以上前の1990年ころの話です。「完本」「フィールド図鑑」では富良野市山部の「太陽の里」の沢筋で取材しました。
オオバタケシマランがそもそもレアな種類です。似たような同じユリ科のホウチャクソウやチゴユリなんかはたくさんあるのですが…。
生えているのはツルシキミと似ているのですが、自然林の暗めの沢筋です。
本州ではサルトリイバラなどもっとポピュラーなユリ科を食べているのに、なぜかこんな特別なユリ科にこだわって北海道ではこだわって難敵種になっているのです。
さて以前撮影した場所に行ってみました。こんなところです。
手前に志田の隙間から葉を広げているのがオオバタケシマランで葉に食痕が見えます。
この株、以前に撮影した株と同じものでした。
葉を裏からのぞくとこんな感じです。(別の株ですが)
近づいてみるとまだ2齢幼虫でした。
1齢幼虫もいます。
ルリタはもちろん成虫越冬ですが、道北では発生が非常に遅れおおむね8月に入ってからです。
食草のオオバタケシマランがしっかり育ってから産卵するからなのでしょうか。
さて難敵種2種紹介しましたが、いずれも図鑑を作ったときと同じ場所での撮影でした。
2種とも食草にこだわりがあるため、いつもの場所で世代を繋げているのでしょうか。
それとも私の怠慢のせいなのでしょうか。
以上。