5月14日:訪道③厚真・安平の蝶たち(つじ)

2023.5.29 更新

(自分の中で)恒例になった支笏湖の日の出写真。1月と比べるとかなり北に移動しています。(1月の時は写真右端の辺りでした)
朝早くから釣りのためでしょうか、多くの車が来ています。

 

厚真に移動しました。昨年秋からの追跡調査です。
【ギンイチモンジセセリ】
夏~秋にかけて20数頭の幼虫を追跡していたのですが、11月には3頭しか発見できませんでした。
その3頭の巣をこんなところにまとめて上から網をかけておきました。
ギンイチは幼虫で越冬し、翌春何も食べずに二回脱皮をして蛹化します。北海道に通うようになってから越冬をずっと追っています。

三つの巣のうち一つです。

薄い膜は越冬用に巣内に綿密に吐糸された言わば巣内の寝袋です。その中、左端に脱皮殻、右端に頭殻が見つかりました。これが一回目の脱皮ですね。これで巣を出て、どこかで枯葉を綴って蛹用の巣を作ることが多いのですが、その幼虫は発見できませんでした。

もう一つの巣がこれです。
右上の赤い印は越冬前に幼虫がいた巣の目印です。

残念なことにこの巣の幼虫は死亡していました。

最後の巣です。ところがこれは越冬前の巣ではありません。赤い印がないので越冬巣から出た後に作った巣のようです。(それを物語る様に、赤い印がついていて、中に幼虫も脱皮殻もない別の巣がありました)
開いてみると寝袋もなく貧弱な巣です。中には左と右に脱皮殻がありました。
実は、当初右の端に蛹があったのですが、撮影をしようと動かしているうちに落としてしまったようです。
このように、越冬巣から一度出てから脱皮をし、その葉でもう一度脱皮して蛹化している、というのは初めて見ました。それだけに蛹を撮影できずに本当に残念でした。
これが前年から追い続けた3つの巣の結果です。

もう一つ、1月の来道時雪の中に見つけた越冬巣を見に行きました。
これです。1月時にはしっかり葉がついていたのですが、その葉はこのように全くついていませんでした。雪に埋もれて春先の雪解け時外れてしまうか、埋もれず空間に出ていて強い風で吹き飛ばされてしまうかして、このように見失うことが多く、結局最初に見ていただいたように、網をかけて地面にしばりつけておく方法をとるようになってきています。

林はこのように木が芽吹いていて、春先のコナラの葉は本当きれいです。

【キマダラモドキ】
キマモドはもう5年以上春先から幼虫探索をしてきたのですが、自然状態のものは未発見。昨年、現地採集の♀から産卵させ、13か所に1齢幼虫を放してみました。
見つかったのは二か所。一か所目は林の中、踏み分け道の脇です。
食痕を目安に見ていると静止している個体を発見できました。

しばらくすると、このように体の向きを変え、節食を始めました。

別の株にもう一つこの個体も節食しています。

撮影していると腕が草に触れ、そこを見るとなんと糸でぶら下がったキマモド幼虫。3頭目です。

しばらく経つと、気づかないうちに食草に登り、やはりこのように摂食を始めました。イネ科です。花が出てから同定を行いたいと思います。

また、それらとは別に林床にも1頭が歩いています。これまたしばらくすると小さな葉で摂食開始。


小さな葉なので、また別の葉を求めて移動&摂食していました。卵は集団で産み付けられ、秋に放した幼虫たちは固まっていたので、このようにして幼虫が分散していくのだろうな?と思わせられる出来事でした。
このように一つの株近くで4頭発見。

もう一つの発見場所は、道路脇になります。

この場所は初冬に見た際、唯一越冬前幼虫を発見できた場所でした。

いずれにせよ、この二か所の植物はイネ科です。
逆に他の場所はカヤツリグサ科の株元に置いたものなので、自然状態では、とりあえずイネ科につく?とも感じたのですが、どうなのでしょうか?

 

昼過ぎに安平に移動しました。

2018年の胆振東部地震で景色が全く変わってしまったこの場所ですが、それでも川はしっかり流れています。

小川沿いの道を歩いていると緑色の幼虫。摂食中のオオヒカゲです。

そのまま歩いていくと、この時期必ず見ることができるルリタテハ(すみません、自分の影が映りこんでいます)。シータテハ2頭とテリトリー争いをしていました。

秋のうちに見つけておいた道沿いのオオチャバネセセリの巣。草刈りが行われていて、ようやく発見できましたが、春になってからの巣は見つからず、越冬巣のあたりには、頭殻がありました。

今回初めてのほぼ丸一日の蝶探索でした。天気もよくとても良い春の一日になりました。